広島高等裁判所松江支部 昭和57年(行コ)2号 判決 1984年2月29日
鳥取県米子市角盤町二丁目六六番地
控訴人
有限会社梅原商事
右代表者代表取締役
梅原正顕
右訴訟代理人支配人
松浪弘
右訴訟代理人弁護士
吾郷計宜
同市西町一八番地の二
被控訴人
米子税務署長
梶尾克己
右指定代理人
佐藤拓
同
毛利甫
同
坂田弘
同
小下馨
同
新田勝久
同
青笹勝徳
同
田中悟
同
高地義勝
右当事者間の昭和五七年(行コ)第二号法人税額更正決定処分及び賦課決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五一年一二月二七日付けで、控訴人の昭和四八年二月一日から昭和四九年一月三一日までの事業年度の法人税についてした更正処分(昭和五三年六月三〇日付け裁決により一部取り消された後のもの)並びに昭和四九年二月一日から昭和五〇年一月三一日まで及び同年二月一日から昭和五一年一月三一日までの各事業年度の法人税についてした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(いずれも昭和五三年六月三〇日付け裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
との判決
二 被控訴人
主文と同旨の判決
第二当事者の主張
次に訂正・付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 訂正
1 原判決四丁表六行目及び一九丁表三行目の「一八日」を「一四日」に改める。
2 同五丁表三行目の「右(1)」を「右(イ)」に改める。
3 同丁裏一行目から二行目にかけての「一三三六万〇一〇〇円」を「二一三六万〇一〇〇円」に改める。
4 同一五丁裏一〇行目の「事実」を次に「中、第一建物明渡しの時期は否認し、その余」 同じ行の「認める。」の次に「控訴人が津田から右建物の明渡しを受けたのは、契約締結日である昭和四八年四月一四日頃である。」を加える。
二 付加
1 控訴人
法人が建物をその敷地利用権とともに取得した場合において、当初から建物を除却して敷地を利用する目的であることが明らかなときは、その建物の取得費用(未償却残額)及び取壊し費用は敷地利用権の取得価額に算入すべきで、これを損金に算入することはできない、との一般的解釈については控訴人も異論はない。しかしながら、本件においては、以下に述べるとおり、控訴人が当初から第一建物を除却してその敷地を利用する目的であつたことが明らかとはいえないから、同建物の取得費用及び取壊し費用は損金に計上されるべきである。
(一) すなわち、まず、建物を除却してその敷地を利用する目的の有無に関する判断の基準時は建物取得価額決定時(契約時)と解すべきであるところ、本件においては右価額決定時は昭和四八年四月一四日であって、当時控訴人は第一建物除却等の目的を有せず、あくまで同建物を事業の用に供する目的であつたものである。
(二) 仮に右判断の基準時を建物取得価額決定時でなく、当事者間における建物所有権移転時と解すべきであるとしても、右所有権移転時は昭和四八年四月一四日(契約時)であり、当時控訴人が第一建物除却等の目的を有しなかったことは右に述べたとおりである。
(三) また、仮に前記判断の基準時が建物所有権移転時であり、かつ、その時期が契約時ではないとしても、遅くとも控訴人が建物代金の大半の支払を終えた昭和四八年一〇月末にはその所有権を取得したものと認めるべきであるところ、当時においても控訴人は第一建物除却等の目的を有していなかった。
(四) 仮に以上の主張がすべて認められず、前記判断の基準時が昭和四八年一二月四日であるとしても、その時点においても控訴人は未だ第一建物除却等の目的を有しておらず、新ビル建築を考え出したのは翌四九年一月頃、その方針を確定したのは同年四月末か五月頃である。
2 被控訴人
控訴人の主張はいずれも争う。
第三証拠関係
原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、失当として棄却を免れないものと判断する。その理由は、次に訂正・付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。
原判決二九丁表七行目の「一八日」を「一四日」に改め、同八行目の「第一土地」の次に「及び第三者所有の土地」を加え、同九行目の「減額された。)」の次に「で売り渡し」を加える。
同丁裏五行目から六行目にかけての「同月中に右建物の明渡しを受け、」を削除する。
同三〇丁裏四行目の「原告」を「後藤」に改める。
同三一丁表二行目から六行目までを次のとおり改める。
「(3) 以上の事実に照らして考えると、津田は第一建物の敷地のうち第一土地を所有者後藤から賃借し、相当長期間賃料の支払を怠っていたものの、前記売買契約時以降においても右賃貸借が存続していたのであり、また、津田と控訴人とは、第一建物を、解体古材として利用するためではなく、建物として存続させることを前提として(ただし、控訴人が第一建物を改造して利用する意思であつたか、これを取り壊して跡地を利用する意思であったかの確定はしばらく措く。)、前記売買の対象としたことが明らかであって、津田は前記売買によつて控訴人に対し、第一建物のみならず、第一借地権をも売り渡したものと認めるに十分である。」
同丁裏一一行目から一二行目にかけての「建てられた」の次に「木造の」を加える。
同三六丁裏五行目の「すなわち」を「ないし」に改め、同六行目から七行目にかけての「所有権移転時期」の次に「等」を加える。
同三七丁表一行目の「各証言の一部」を「各証言(ただし、津田証言については一部)」に改める。
同三八丁表九行目の「以上」から一二行目の「できる。」までを「以上の認定事実を総合すれば、第一建物の所有権が津田から控訴人に移転した時期は売買代金が完済された昭和四八年一二月四日であり、第一借地権が移転したのも右同日であると認めるのが相当である。」に改める。
同丁裏一行目及び八行目の「一八日」を「一四日」に改める。
同三九丁表一〇行目から一一行目にかけての「措信できず、」を「措信できない。」に改め、同一一行目の「他に」から一二行目の「ない。」までを削除する。
同丁裏二行目の「第一借地権については同月三日」を「第一借地権についても同じ」に改め、同五行目の「土地を」の次の「取得」を「利用」に改める。
よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田辺博介 裁判官 萩原昌三郎)